2001ー09-15

総合的な学習の進め方と評価について

はじめに
T 総合的な学習の時間の進め方
  1、3つの課題と4つの柱
  2、子どもの願いと教師の思い
  3、はじめにこどもあり
  4、具体的な進め方 
U、総合的な学習の時間と評価
  1、評価とは
  2、総合的な学習の評価
  3、総合的な学習の評価の観点
 
 4、評価の技法としてのポートフォリオ     


はじめに
「総合的な学習の時間」って
 ○ 「総合的な学習の時間」の位置づけ
  @ 各教科のように何学年で何を指導するという内容は示されていない。
   ※ 各学校において創意工夫を生かした学習活動を行うものだから
   ※ 学習活動が各教科の枠を越えたものだから
A 授業時数(3・4年生・・105時間 5・6年生・・110時間)
   ※ 年間指導計画を作成するのに当たっては各教科学習内容との関連を
     図るようにする
   ※ 活動内容によっては特定の時期に集中して実施することも考えられ、
     一年間を見通して弾力的に時間配当をするよう工夫する。
 ○ 「総合的な学習の時間」の創設の趣旨

 ○ 「総合的学習の時間」のねらい

     ※ 情報の集め方、調べ方、まとめ方、表現や発表・討論のしかたを身につける
     ※ 問題の解決、探求活動に主体的に創造的に取り組む態度を育成。
     ※ 自分の生き方について考えること。

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T 総合的な学習の時間の進め方
   1、 3つの課題と4つの柱


 ○「3つの課題」とは、学習指導要領(第1章第3条)に示された課題
   @横断的・総合的な課題
   A地域や学校の特色に応じた課題
   B児童・生徒の興味・関心に基づく課題

 ○「4つの柱」とは、@横断的・総合的な課題の例示
   ァ国際理解    ィ情報   ゥ環境   ェ福祉・健康

    ※趣旨やねらいに即して適切な活動を全部行わなくても、
      上記以外の活動を行うこともさしつかえない。

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2、 子どもの願いと教師の思い

     小学校        →              高校

 ○「子どもの願い」と「教師の願い」をどのように調和させるのか
   子どもも自分たちがやりたいことのためには調べることもいとわない。
   子どものやりたいこと(願い)を先行させ、そこに教師の意図(思い)をにじませる。

   「素材」と「活動」を適切に組み合わせるまで、辛抱強く話し合いを重ねることが大切。
   何を素材にして、どんな活動をしたいか、具体的にしていく。
   つまり「テーマ」を明確にすること。

    ウェビングを活用した教材研究
        素材をもとに子どもたちの活動や思考の広がりを予想し、
        アイディアを広げていくもの

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3、 「はじめにこどもあり」
  2000年12月の教育課程審議会答申
   「総合的な学習の時間」では
      「各学校において目標、内容を定めて指導を行うことが必要」であり、
      指導要録等で用いる評価の観点も「その内容に基づく。」
   では「はじめに内容ありき」でいいのか。 
      「総合的な学習の時間」では子どもの求めを最優先に単元を構成したい。
      内容も子どももどちらも大切。
   これは、教材単元と経験単元の違い(単元構成の二つの原理)
      教材単元とは・・・内容のまとまりを基礎にして単元を構成する考え方
              ァ、教師が子どもに身につけさせたい内容
              ィ、実現するのに適した活動・教材
              ゥ、導入の工夫などによって、子どもにとって意味のあるものにしていく
             その意味で「はじめに内容ありき」といえる。
      経験単元とは・・・子どもにとって意味のある問題解決活動のまとまりを基盤に単元を
                 構成する考え方
              ァ、子どもの求め(夢・願い・気がかり)
              ィ、それに応じる形の活動
              ゥ、展開途上に於いて出会う切実な問題の
                子どもによる解決を通して教育的内容が学ばれるようにしていく
               その意味で「はじめに子どもあり」といえる。

 ○「はじめに子どもありき」とは、経験単元を採用するということ
     経験単元であるから、子どもの求める活動の展開の中で、結果的に
     内容が実現されていくように単元を構成していく
      そのために、各学校で目標や内容をしっかりと考えていくことと
     それを具体的にどのような単元(活動)を通して実現していくかを
     明確に分離して考える。そして単元構成については、経験単元によるようにする。

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4、 具体的な進め方
 ○ 「総合学習」と「総合的な学習の時間」との違い
   @ 「総合学習」とは・・・子ども自らが課題を設定し、自らの課題解決方法を見つけ、
                  主体的に取り組んでいく学習
                  (伊那小・奈良女子大付属小等)
   A 「総合的な学習の時間」とは・・既存の教科や領域内容では十分に取り扱いきれない
                  現代的課題などについての学習を教科や領域を組み合わせたり
                  関連させたり独自の時間を設けて学習する活動。
                  問題解決能力の育成やコミニュケーション力や情報報活用力などの
                  「生きる力」を育む学習。
                          
 ○ 「総合的な学習の時間」を組むために
    

   @ 子どもの実態を把握する
   A 地域の実態と特色をとらえる
   B 地域の願いや保護者の願いを把握する
   C 学校の研究や実践の歴史を継承発展する
   D 子どもたちに育てたい力を話し合う

      発達段階を考え、学年のめざす子どもの姿を考える。

 ○ 「総合的な学習の時間」のカリキュラムを作成するために
    

どのような子どもを育てたいかを明らかにする。
・学級目標と関連づけて考える。
      ・ 総合的な学習の時間や各教科で、どのような学ぶ力をつけさせたいのか構想する
総合的な学習の時間の具体的な活動を考える。
・どのようなところから課題を考えさせるのか、活動のきっかけを構想する
・中心となる活動とそれを支えるいくつかの活動を考える。
・ 活動ごとの関連を子どもの思いや願いを想定するとともに、活動の順序や時期を考える。
総合的な学習の時間の活動を進めていく中で、教科などの学習をどのように入れていけばいいか、
関連させていけばいいかを考える。
活動時間を算出し、月ごとの時数を考えるとともに、どの時期に活動をすればいいかを考える
地域の人材や資料収集する機関などの下調べをする。


○課題の設定
   教師の「しかけ」の重要性
     子どもたちが興味・関心を抱くような情報の提供
     問題場面に立たせるなど

 課題設定への段階的アプローチ
    1 教師提示型1
      子どもの潜在的な思いや願いをくみ取って課題として提示。
      横断的・総合的課題などは具体的な場面をとらえて提示。
    2 教師提示型2
      包括的な複数の具体的学習テーマを提示。
      子どもが選択し、同一選択の子どもでグループを構成。
    3 子ども設定型
      子どもたちが日頃から暖めていた課題を設定。
      教科学習の発展する場合が多い。
      子ども自身で追求。

○ 課題の立ち上げ 例
   投げかけ型
       総合的な学習の時間の性格を話して「何をしようか」と持ちかける。
       みんなで時間をかけて追求する課題を探す。
   戦略型
       問題場面の場に立たせて、そこで問題を探す。
       夏休み前などに興味・関心のある情報などを持ち寄ることを話す。
   代弁型
       潜在的な求めを教師がくみ取って課題として提示する。
       子どもの興味・関心事を課題として整理する。
       教科発展として、こだわった個所を教科の枠を外して再度チャレンジする。
   教師提示型
       教師が提示してみんなで追求課題を考える。

実践例
   「ぼくのわたしの鴨居港(地域を生かした総合的な学習の時間)
   「ぼくの町・私の町 鴨居」(情報活用能力の育成を高めることをめざす総合的な学習の時間)
   「みんなで考えよう鴨居の町」(国語の授業の発展として福祉の心を育てる総合的な学習の時間)

      (この文に戻る場合は、エクスプローラーの←をお使い下さい。)

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U、総合的な学習の時間と評価
  1、 評価は何のため(参考 未来教育デザイナー 鈴木敏恵)
     ○評価は、励ましのエナジー
         間違い探しをすることではない
         誰かと比較することでもない
         ここを押さえれば達成できるという点
         価値あるポイントを見いだす視力
         もっと良くなるために必要なもの
         曖昧では意味がない

     ○何を評価する
         生み出した成果を
         その子の成長を
           目に見える成長と目に見えない成長がある
           目に見える「スキル」〜できるようになった
                        〜が身に付いた
           目に見えない「知や感」〜を考えられるようになった
                          〜に気が付くようになった
    ○評価は、いつ誰が何のために
        いつしてもいい
        もっとよくしたいと願うとき、いつでもするもの
        もっとよくするために有効ならだれがしてもいい
        子ども自ら、ともだち、教師、専門家、社会、いろいろな方向から
        目標達成のため
        よりよい「成果」を果たすため
        子どもの成長のため

    ○評価を成長に生かすには
        評価は成長のために
        どうしたら成長するか、作戦や工夫をたてる
        目に見える成長のためにはやってみる(活動)時間を
        目に見えない成長のためには考える(思考)時間を
        活動時間の後には思考時間を
        

2、「総合的な学習」の評価
○ 「総合的な学習の時間」と教科学習の違い
    教科は、指導すべき内容が特定されている
       それを観点として評価すればよい
       内容を細分化し、観点を明確にすれば数値的評価も可能
    総合的な学習の時間は、
       内容が特定されずむしろ活動を通して生み出す。
       評価の観点も安易に設定できない。

○ 内容評価から能力評価へ
   関心・意欲・態度の評価は難しいという声
   それを解くキーポイント
   「何を覚えたか」「何を理解した」ではなく「どんな力がついたか。」
   という内容評価から能力評価へ

○「ついたか」から「つくか」へ   
   どんな力が「ついたか」から「つくか」への視点の転換を
   ゴールにたどり着いた子どもたちから得られる評価は、学習内容を中心とした静的な姿。
   学習のプロセスで獲得する能力は動的なもの。
   そのため指導中に行うもの指導と評価の一体化を図らないと無理

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3、「総合的な学習」の評価の観点
   「教育課程審議会答申」では、「総合的な学習」の結果を指導要領に記載するに際し、
   教科と同様、観点別学習状況を基本とする事を提言。
   観点は、「各学校において指導の目標や内容に基づいて定める」と。
  
3種類の観点の定め方を例示

@ 学習指導要領に示された二つのねらいを要素分解して
     ア「課題設定の能力」
     イ「課題解決の能力」
       (自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる) 
     ウ「学び方、ものの考え方」
       (情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身につけること)
     エ「学習への主体的、創造的な態度」
       (問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成すること)
     オ 自己の生き方
       (自己の生き方についての自覚を深めること)
 A 教科と関連を明確にして
   ア「学習活動への関心・意欲・態度」
   イ「総合的な思考・判断」
   ウ「学習活動にかかわる技能・表現」
   エ「知識を応用し総合する能力」

B 各学校の目標・内容に基づいて
   ア「コミュニケーション能力」
   イ「情報活用能力」など

 
  あくまでも例示、文字通りの例示
     カリキュラム(目標・内容)や単元づくりとともに指導要録の観点も考えていくべき
 具体的評価の事例 
「ぼくの町 私の町 鴨居」の評価(見とりのポイント)

関心・意欲・態度 ・身近な地域・人・自然に関心を持とうとする。
・身近な地域を調べようとする。
・安全に気をつけて友だちと協力しながら地域の中を調べようとする。
・地域を調べて印象に残ったところを進んで他の人に知らせようとする。
・地域の環境を守っていこうとする。
  思考・判断 ・自分なりに工夫して町を調べる課題を立てる。
・自分の課題と友だちのたてた課題を比較してよりよい課題に作り替えることかできる。
  技能・表現 ・ワープロソフトを活用し、コンピューターの使い方になれる 。
・町を調べて驚いたこと等を簡単な文や絵で表現することができる。
  知識・理解 ・デジタルカメラの使い方を知り、活用することができる。
・地域のよさを知る。
・町を調べることを通して友だちと協力する楽しさを理解する。

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4、評価の技法としてのポートフォリオ
  ○ポートフォリオとは紙ばさみ
       学習した対象やプロセスが見える必要がある。
       本人が書き込んだワークシートやその日の活動が分かる資料、集めた情報をまとめた成果など、
       学習のプロセスがすべて一元化され、その一つ一つが見える
       もともとポートフォリオとは、建築家・デザイナーなどが自分の作品を伝える活動や実績をファイルして、
       その人のセンスや能力・経歴を見せていた。
    
  ○ポートフォリオを学習に生かす
     1 活動した際、資料や成果を入れる
           ポイント・・・「自分の成長を見ることかできるよ」「入れるものには日付を」
      2 見直す(再構築する)・・重要かつ意味のある点を発見し、凝縮し、普遍的、本質的な「知の構築」を
           ポイント・・・「重要なこと、伝えたいことを見た人の役に立つように」
     3、活用する・・・・・・・再構築したものを使って表現
  

目次に

参考資料 文部科学省 児童生徒の学習と実施状況の評価のあり方について(教育課程審議会答申)


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